車検・整備

12ヶ月点検は自分でできる?法律上の扱いと26項目の進め方・記録簿の書き方

2026年8月18日

点検の案内が届くたびに、これくらい自分でできるのではないかと思う。ボンネットを開けてオイルの量を見て、タイヤの溝を測って、ブレーキの効きを確かめる。日ごろから自分で車をいじっている人ほど、そう感じるはずです。

結論から書くと、12ヶ月点検を使用者自身が行うことは、法律上まったく問題ありません。ただし、認められていることと、最後まで自分の手で完結できることは別の話です。26項目のうち何割かは、リフトかジャッキアップができないと確認のしようがありません。

この記事では、どこまでが工具箱と30分で終わり、どこから設備がないと届かないのかを項目単位で線引きします。あわせて、実際にやってみた人が最後につまずきやすい点検整備記録簿の扱いも整理します。

自分で点検することは制度として想定されている

道路運送車両法は、車を安全な状態に保つ責任を使用者に置いています。定期点検整備についても、実施する主体はあくまで使用者であり、整備工場に出す行為はその義務を専門家に委託しているにすぎません。自分の車を自分で点検し、結果を記録する。これは抜け道ではなく、法律が最初から想定している形です。

ここで混同されやすいのが、認証がなければできない整備の話です。国の認証が必要なのは、業として他人の車の特定整備を行う場合です。自分が所有する車を自分で整備する分には、認証は関係ありません。極端に言えばブレーキを分解しても違法ではなく、その結果に対する責任を全部自分で負うだけです。

ただし、自由になるのは作業の主体だけで、記録を残す義務はどこにも消えません。むしろ自分でやる人ほど、この部分を軽く見て後で困ります。

なお、日常点検と12ヶ月点検は別物です。日常点検は運転する人が普段から見ておくべき15項目で、実施の記録も求められません。対する12ヶ月点検は26項目で、記録簿への記載が伴います。日常点検を丁寧にやっているから12ヶ月点検の代わりになる、とはならない点は最初に押さえておいてください。増える11項目のほとんどが、下回りと足回りに集中しています。

始める前に押さえておく3つの前提

前提1:点検整備記録簿は自分で用意する 新車購入時に渡されるメンテナンスノートに綴じ込まれていることが多いのですが、見当たらなければカー用品店やネット通販で購入できます。数百円程度で、国土交通省の様式に沿ったものが手に入ります。用紙がないまま点検だけ終えても、実施した証明が何も残りません。

前提2:フロントガラスの丸いステッカーは手に入らない 点検済みを示すあのシールは、整備事業者に配布されるものです。自分で点検した場合は入手できません。ただし、12ヶ月点検のステッカーには貼付の義務がありません。車検のときに交付される検査標章とは制度が別で、貼っていないことで取り締まりを受けることはないと考えて差し支えありません。

前提3:不具合を見つけたあとまでが自分の仕事 点検は、悪いところを探す作業です。見つけたら直すところまでが一連の流れになります。摩耗したブレーキパッドを発見しても交換できないのであれば、結局その部分だけ工場に持ち込むことになる。自分でやると決める前に、どこまで直せるかを先に考えておいたほうが手戻りが少なくて済みます。

26項目のうち、自分の手で終わるもの

工具箱があれば確認できるのは、次のあたりです。

・ブレーキペダルの踏みしろと、踏み込んだときの床とのすき間

・パーキングブレーキの引きしろ、効き具合

・エンジンオイルの漏れ、量、汚れ

・冷却水の量と漏れ

・ファンベルトのゆるみ、ひび割れ、損傷

・バッテリーターミナルの緩みと腐食

・エアクリーナーエレメントの汚れ

・タイヤの溝の深さ、空気圧、亀裂、偏った摩耗

・ワイパーの作動とウォッシャー液の噴射

・排気ガスの色や臭い、マフラーからの異音

・低速走行時のブレーキの効き具合

このあたりは日常点検の延長で見ていける範囲です。明るい場所で1時間もあれば、慌てずに一巡できます。

ジャッキアップかリフトが必要になるもの

一方で、車体を持ち上げないと物理的に見えない項目があります。

・ブレーキパッドやライニングの摩耗量

・ブレーキディスクとパッドのすき間

・ドライブシャフトのダストブーツの破れ

・ステアリングのロッドやアーム類のガタ

・サスペンションの取り付け部の緩み

・エキゾーストパイプやマフラーの損傷、取り付けの緩み

・下回りからのオイルやブレーキフルードの漏れ

12ヶ月点検で本当に価値があるのは、実はこちら側です。エンジンルームの油脂類は普段から見ている人が多いのに対し、下回りは点検の機会でもなければ誰も覗きません。ブーツの破れや漏れの初期症状は、ここでしか見つかりません。

つまり、自分でやると決めるということは、下回りを見る手段を確保するということとほぼ同義です。上まわりだけ済ませて終わりにするなら、それは点検ではなく日常点検の丁寧版になります。

用意するものと初期費用

・点検整備記録簿

・ガレージジャッキ

・リジッドラック(ウマ)2脚以上

・輪止め

・タイヤデプスゲージ

・トルクレンチ

・手元を照らせるLEDライト

・車種ごとの整備解説書またはメンテナンスノート

一式そろえると、2万円前後は見ておく必要があります。工場に頼む1回分の費用と比べれば初年度は確実に割高で、3年、5年と続けて初めて回収できる計算です。道具は毎年使えるので、長く同じ車に乗る人ほど有利になります。

トルクレンチとリジッドラックは、価格で妥協しないほうがいい道具です。前者は締めすぎと締め足りないの両方を防ぎ、後者は自分の命を預ける器具になります。

ジャッキについても、車載のパンタグラフジャッキは緊急時用と割り切ってください。点検のように持ち上げた状態を長く保つ用途には向いていません。油圧式のガレージジャッキであれば、上げ下げが速く、位置の微調整も効きます。

なお、記録簿は複数枚つづりのものを選ぶと数年分をまとめて管理できます。年ごとにばらけた紙が増えると、車検の直前に探す羽目になります。

進め方の順番

順序を決めておくと、見落としが減ります。おすすめは、動かせるものから動かせないものへ、上から下へという流れです。

まず室内から始めます。ブレーキペダルを踏んで遊びと踏みしろを確かめ、パーキングブレーキを引いて引きしろを数えます。ここは工具も要らず、感覚の変化に気づきやすい部分です。

次にボンネットを開けます。エンジンをかける前にオイルレベルと冷却水を見て、ベルトの張りとひび割れ、バッテリー端子を確認します。そのあとエンジンを始動し、異音や振動、排気の様子を見ます。冷えた状態と温まった状態では見え方が変わるので、この順番には意味があります。

続いて車の外周とタイヤです。溝の深さは1本につき数か所測り、内側と外側で減り方が違わないかを見ます。片減りが出ていれば、アライメントか足回りの疑いが立ちます。

最後にジャッキアップして足回りと下回りに入ります。ここが時間のかかる工程で、初めてなら2時間ほど見ておくと落ち着いて進められます。ライトを当てながら、漏れの跡、ゴムブーツの破れ、取り付け部の緩みを順に追っていきます。

すべて終えたら、必ず短い試運転をします。低速でブレーキの効きと直進性、異音を確認して、そこまでで1回の点検が完結します。

良否をどこで線引きするか|数値の目安

自分で点検していて一番迷うのは、見つけた状態が交換すべきレベルなのかどうかという判断です。基準を数字で持っておくと、その場で悩まなくなります。

・タイヤの溝:使用限度は1.6mm。スリップサインが接地面と同じ高さになったら使用不可

・タイヤの空気圧:運転席のドア開口部に貼られた指定値に合わせる

・ブレーキパッド:新品はおおむね10mm前後。残り3mmを切ったら交換の検討に入り、2mmを下回ったら先送りしない

・ブレーキフルード:リザーバータンクの上限と下限の間にあること。茶褐色に濁っていれば交換時期

・エンジンオイル:レベルゲージの上限と下限の間。下限に近ければ補充する

・冷却水:リザーバータンクのFULLとLOWの間

・バッテリー電圧:エンジン停止後しばらく置いた状態で12.5V前後あれば正常、12V前後まで落ちていれば弱っている

数値の基準がない項目は、前回との比較が判断材料になります。去年より明らかにペダルが深い、去年はなかった滲みがある。こうした変化に気づけるのが、毎年同じ人が点検することの利点です。記録簿に気づいた点を一言ずつ書き残しておくと、翌年の自分が助かります。

車種ごとに規定値が決まっている項目もあります。ベルトのたわみ量やペダルの遊びは代表例で、これらは整備解説書やメンテナンスノートの数値に従ってください。

安全面でこれだけは守ってほしいこと

自分で点検する上で、譲れない一線があります。ジャッキだけで持ち上げた車の下に体を入れないことです。油圧ジャッキは徐々に下がることがあり、下敷きになる事故は毎年起きています。必ずリジッドラックで支え、支えたあとに車体を軽く揺すって安定を確認してから潜ってください。

作業場所は、平坦で硬い舗装面に限ります。傾斜地や砂利、土の上は避け、持ち上げない側のタイヤには輪止めをかけます。エンジン始動を伴う作業は換気のよい場所で行い、マフラー周りは熱が引くまで触らない。当たり前のことですが、慣れてきた頃に手を抜きがちな部分でもあります。

ブレーキ周りに手を入れた場合は、公道に出る前に敷地内で必ず効きを確かめてください。ここだけは面倒でも省略しないでほしい工程です。

記録簿の書き方と保存

点検が終わったら記録簿に記入します。書くのは、点検した日付、そのときの走行距離、点検した人の氏名、そして各項目の結果です。

結果は記号で記入します。様式の欄外に凡例が印刷されているのでそれに従えば間違いありませんが、おおむね次のような意味づけになっています。

・レ:点検した結果、異常がなかった

・A:調整した

・C:清掃した

・T:締め付けた

・L:給油した

・×:不良があり、部品を交換した

・△:修理した

・/:その車には該当しない項目

点検者の欄には、使用者本人が実施したことがわかるように自分の氏名を記入します。工場名を書く欄が空欄であること自体は問題ありません。

書き終えた記録簿は、次の点検まで手元に保存します。保存期間は点検の種類や車種で扱いが変わりますが、自家用乗用車なら少なくとも次回分が発行されるまで残しておくと考えておけば足ります。車検の際に提示を求められることがあり、売却時に整備履歴として評価される場合もあるので、車検証と一緒に車内で保管しておくのが実務的です。

自分でやる価値がある人、やめておいたほうがいい人

向いているのは、すでにタイヤ交換やオイル交換を自分でこなしていて、ジャッキアップに抵抗がない人です。作業スペースを確保でき、同じ車に長く乗る予定があるなら、道具代を回収したうえで車の状態を細かく把握できるようになります。異変に早く気づけることが、費用の節約以上の利点になります。

反対に、集合住宅の駐車場しか作業場所がない人、リフトを使わずに下回りを見る自信がない人は、無理をする場面ではありません。ハイブリッド車や電動化装備の多い車も、高電圧系統の扱いがあるため素人作業の範囲を超えます。上まわりだけ自分で見て、下回りは工場に任せるという分担でも、点検の意味は十分に果たせます。

完璧に自分で全部やるか、全部任せるか。この二択で考える必要はありません。

まとめ

12ヶ月点検を自分で行うことは法律上認められており、記録簿に自分の名前で記入することもできます。制度の面でのハードルはほとんどありません。

実際のハードルは設備側にあります。26項目のうち、車体を持ち上げないと確認できない項目が半分近くを占め、しかもそこが点検の中核です。ジャッキアップの環境と道具、そして安全に対する慎重さを用意できるかどうかが、自分でやれるかどうかの分かれ目になります。

道具をそろえる初期費用は2万円前後で、初年度は工場に頼むより高くつきます。それでも自分でやる価値があるとすれば、支出が減ることよりも、自分の車の状態を自分の目で把握できるようになることのほうです。次の1年をどう走るかを、他人の見積書ではなく自分の判断で決められるようになります。

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